映画旅行家nomadicのブログ

映画を観ながら、旅するように暮らしたい。鑑賞後に作品を語り合いましょう

映画雑感『ショートウェーブ』(2016、アメリカ)

ショートウェーブ [DVD]

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「ショートウェーブ」(2016、アメリカ)


ご覧になって、期待通りの映画でしたか?
アート系のパッケージ写真を、後半から裏切り、ホラーな展開でしたね。
まるで、ホラーの古典的作品「エクソシスト」みたいでした。

うれしい驚きだった、
グロテスクで観たなかった、
評価が分かれそうです。あなたは、どちらでしたか?
 
主人公の女性の「幻覚」がフラッシュバックのように、たくさん出てきて、疲れましたね。
本当に必要だったのか、と文句のひとつでも言いたくなります。
 
ストーリーは、よく出来ていたと思いますが、ちょっと分かりにくい。
エンタメ作品なのに、アートっぽい映像と作りで、説明が少なく、視聴者の判断に任せている。
研究所兼別荘のインテリアのセンスは抜群でしたし、映像のサービス満点なので、深く詮索せず、流れに任せて楽しむ作品でしょう。
しかし、注意深く、観ると結構、考えて、作り込まれている作品でもあります。
なんとなく変だ、と突っ込みたくなるシーンが多いのですが、分かりやすく回収してくれない。不親切な作品です。
あなたは、どんなシーンが気になりましたか?
 
なぜ、冒頭のシーンで、主人公の女性が我が子を探して、さまよう街に、誰もいないのか?
(組織の資金力を表現している、つまり、店員、街の住民も、みんな共犯)
 
果たして、研究者の夫も、グルだったのか?
(いくつかのシーンで、そうでないことが示されている。街に出ようとして、彼女が研究所から出れない時、素直に驚いていた等)
 
被写界深度の浅い、おしゃれな映像は何を意味するのか?
(宇宙人の視点ではないでしょうか?)
 
ご存じの通り、要約すると、研究者とその奥さんが、調査・研究組織に利用された話ですね。
子供をさらい、精神不安を与え、宇宙人のとの通信手段に使われた。
結果的に、宇宙人に逆利用され、「憑依」された女性が反撃していくホラーな展開になるわけです。
 
奇想天外なSFであり、ホラーなのですが、主人公の女性の内面描写を軸にストーリーが進むので、情緒的な作風といえ、不思議な味わいを残します。
それにしても、悲しい話ですね。
 
冒頭の子供をさらわれて半狂乱になって誰もいない街をさまよう姿は、憑依されて、もはや人間ではなくなり(娘のことはどうでもよい)、研究所を出て行くラスト・シーンと重なります。
 
最後のフラッシュバックの、夢を語り合う夫との思い出も、既に人間性を失った彼女には、ただの記憶にすぎない、と思わせます。
 
これこそが真の恐怖であり、この作品のメイン・テーマなのでしょう。
 
しかし、ホラーよりも、悲しみを通り越して、主人公が、可哀想すぎる。
救いがない。理不尽なんですね。
これは、やはりSF映画の特徴なのでしょうか?
 
この作品をみて、連想したのは、スカーレット・ヨハンソンが主演した「アンダー・ザ・スキン 種の補食」(2013、英・米・スイス)です。

アンダー・ザ・スキン 種の捕食 [DVD]

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次のカッコ内は、ネタバレになります。ご注意を。
(宇宙人の主人公で撮られた作品で、人間を学習していく内に、感情が芽生えてしまい、それがもとで、混乱しながら、彼女は破滅していきます。人類にとっては朗報のラストですね)
 
宇宙人に憑依されて、人間性を失う、悪夢のような結末(これから彼女は一体、何をするのか?)の「ショートウェーヴ」と対比的だと、思いました。
 
どちらも、女性が主人公にふさわしい、「非人間性をテーマにしながら、情緒的なSFホラーで、もし、気に入られたのなら、鑑賞を、お勧めします。
 
関係ない作品同士が、響きあって、味わい深さを増す体験は、映画の醍醐味だ、と思います。
 
それでは、ほかの作品を観た後にでも、また、お会いしましょう。

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